「またせたな、唯ちゃん。
 今、託実にも連絡したさかい。

 百ちゃん電話の向こうで怒りまくとったから、
 堪忍しいや」


入ってきた十夜さんは、
軽いノリでそんなことを紡ぐ。



百花が怒ってるって?

想像しただけでもヤバイじゃん。



しかも百花は妊娠中。
怒りすぎは胎児に悪いって。



「まっ、とりあえず体冷えすぎや。
 
 女の子は体の冷やし過ぎは毒や。
 お風呂でゆっくりしてきたらええよ」


十夜さんが言うと、
来夢さんが私を連れて
浴室に案内してくれる。



お風呂のお湯が暖かくて、
なんだかほっとすることが出来た。



薔薇の香りがするソープで
泡いっぱいに体を包んで、
ごしごししていると、
穢れた体が綺麗になるような
錯覚さえ覚えた。



アイツに好き放題触られた体。


心までは許してないっと言っても、
アイツが刻み込まれた現実は
消えない……。




……雪貴……ごめん……。





そう思ったら、
ただ泣き崩れるしか出来なくて。




お風呂の中で、
浴室に顔を沈めながら
涙を流し続けた。


流れ過ぎた涙は、
お湯が隠してくれる。




どうしよう……。

私……、
雪貴に合わせる顔なんてないよ。




それにアイツの前から消えた私。


アイツは
霧生君に何処まで話した?


私の事だったらいい。

だけど……
また雪貴を傷つけられたら、
そう思ったら、体が震えていく。