「紫音さま、雪貴の手終わった?」



治療が終わると同時に飛び込んできた
国臣は唐突に告げた。



「紫音さま、雪貴今は少し休ませないといけないよね。
 指。
 
 適度な練習は必要だけど、練習はどこでもできるよね。
 ボクが行くところには、必ずインペリアルがあるから」


えっ?

国臣さんは何を言い出すの?


黙って二人の顔を見るしかなくて。


「無理させないんだよ」


伊集院さんが告げると国臣さんは
嬉しそうに、にっこりと笑って宣言した。



「雪貴、君をボクのツアースタッフとして招待するよ。

 ついでに、日本まで連れて行ってあげるよ。
 自家用ジェットで」



国臣さんの爆弾宣言から数日後、
俺は初めての自家用ジェットで日本へと帰国した。


全てがVIP待遇の時間。


そのまま彼は、
神前悧羅系列のホテルへとチェックイン。

そのままリサイタルを見学する形で
国臣さんのスタッフとして日本で勉強を続ける。


世界クラスの演奏。


惣領国臣の凄さを
まじまじと見せつけられた時間。


その後は、託実さんの結婚式に参加する為に
ピアノを離れて、
兄貴のゼマティスと自宅マンションで戯れる。


日本に帰って来ているのに、
今も唯ちゃんとは会えないまま、
託実さんの結婚式の当日を迎えた。