アイツが付きまとうようになって
一ヶ月少し。

秋の涼しさが
感じられるようになった。


アイツに縛られた手首を
リストバンドで隠して、
長袖を身につけて家を出ていく。





家の前には、いつもと変わらない
仮面を被ったアイツ。



関わりたくなくて、
無視して学院へ急ぐ私を
追いかけるように
早足でついてくるアイツ。




最寄り駅から学院までの道程。


アイツが生徒たちに
言い触らしたおかげで、
勘違いした子たちは
次々に冷やかしの声を浴びせていく。




「おはようございます。
 悠太先生、唯ちゃんモノにしました?」

「おっ、お前……いいこと聞くな。
 お前らからも何とか言ってくれよ。

 コイツ、ガード固くて。

 他に好きなやつでもいるのかな?
 この学校内に。

 生徒と出来てるとか?
 お前ら、知らないか?」



わざと私が戸惑うのを知りながら
確信犯で、
生徒たちを煽っていくアイツ。





嫌っ。

関わらないで。






雪貴との時間を
脅かされるのは嫌。


雪貴を困らせるのも嫌。



雪貴は未成年で、
私は言い年した大人なのに
私は自分の身すら守れない。