……何してんだよ、唯ちゃん……。
互いに居る距離が遠すぎて
不安材料は増えるばかり。
「雪貴君。
唯香さんのことは、
気にかけておくから。
主治医だからね。
あの子も抱え込みだすと抜け出せないからね。
君と同じで。
明日、帰国予定だから
何かわかったら、俺からも連絡を入れるよ。
だから君は、君がするべきことをこの場所で」
そう言って立ち上がる裕先生の後、
俺はついていくと、
会計を済ませて店の外に。
「ごちそうさまでした」
「雪貴君、紫音さまの課題は
君の腱鞘炎を悪化させることはないよ。
その時その時の手の状態に合わせた
曲で練習するのも、
上達の為には大切なことだからね。
悪化するようだったら、紫音さまに
正直に話すといいよ。
彼はピアニストであると同時に、
音楽家専門の悩みを
治療する医師でもあるから」
思いがけない言葉。
だけど……その言葉は
今の俺には頼もしかった。
悪循環のループばかりだったから。
今も不安がないと言えば嘘になる。



