突然、無茶苦茶な発言を切り出した
国臣さんは、そのまま舌をペロっと出して
悪戯っ子の瞳を浮かべて出ていく。




「国臣さん。

 一年後にDTVT演奏なんて、
 あのお二人が許すはずないですよ」


宝珠と高臣。

そしてDTVTときいて
思い浮かんだのは、
裕先生を通して、
知り合うことが出来たあの二人。


Ansyalが所属している
事務所の関係者でもある存在。




「そうだね。

 はっきり言うと、今の君のレベルじゃ
 無理だよ。

 だけど、君の音色がボクは好きなんだよ。
 ただひたすら、真っ直ぐに駆け上がる
 そんな音色の世界がね。

 だから……一年後なんだ。

 今はボクの音が、
 君を食いつぶしてしまうから」



そうはっきりと告げられた言葉に、
悔しさがこみ上げる。



「わかりました。

 一年後、俺の音は国臣さんと対等に、
 願わくば、それ以上でありたいと思います。

 練習してきます」

「うん。
 待ってるよ。
 
 今、Aルームは深由【みゆ】が
 使ってるから、

 君はCルーム。 
 Bルームはボクが使うから。

 君のCルームには、
 紫音さんが後で顔出すって。  
 
 あの人、今日海外公演から帰国だから。
 あっ、後はエル少し借りるから」



マイペースで無邪気そうに告げる
人懐っこいその人。



だけどその人のピアノは
万人の心を震わせる。