二学期が始まって二週間。

まだたったの二週間なのに、
アイツが学院に居るって言うだけで
教師なのに、通勤が嫌になってる。


アイツは、あの日
私にしたことなんて
つゆともしらないとばかりに
学院内で、
ありもしない噂を流していく。



『君たちの唯ちゃんと俺は
 付き合ってたんだよ。

 俺、振られちゃってさ。

 でも今も片想い続行中。

 この学校に居る間に、
 もう一度振り向かせるから』



なんて生徒の前で宣言するもんだから、
学校に行くたびに、
気になる生徒たちからは、
その話題ばかり質問される。





んっ、もう。
むしゃくしゃする。





穏やかに過ごしてた私の生活、
どうしてくれるのよ。




それでも朝は来るわけで、
仕事を休むわけにはいかない私は、
気が乗らないまま準備をして
自宅マンションを出た。







こんな時に……
雪貴が近くに居てくれたら。




そう思う時もあるけど、
雪貴は私のことには敏感すぎて、
こんな状態で、電話しようものなら
すぐにでも帰国しかねない。





今でも一日何通も
送られてくるメールは
私を気遣うメールばかり。



霧生くん、
いったいどんな連絡してるのよ。



そう思わずにいられない
心配メールの数々。





ねぇ、雪貴。


私を心配してくれるのは嬉しいけど、
私は雪貴が向こうで
どんな生活をしてるかが
知りたいんだけどな。


なんて思いながら、
いつも携帯を閉じるのよ。




雪貴は居ないのに、
出すことのない本音を
心の中で呟いた。