「何、雪貴君どうかした?
唯が捕まらないって、
連絡つかないと心配かもだけど、
雪貴君の留守中は、
しっかりと私と託実で監視しておくから」
「あっ、あの……。
百花さんって、
唯ちゃんと何時からの友達なんですか?」
少しでも手がかりが欲しくて、
すがる思いで問いかける。
「私は大学かな。
Ansyalがきっかけだもん」
「その時って、
唯ちゃん彼氏とか居たんですか?
今、学校に唯ちゃんの元カレって自己紹介した
土岐悠太ってヤツがいるみたいなんです」
そう告げた途端に、
電話の向こうの百花さんのトーンが一気に変わる。
「何?土岐って言った?
アイツが唯の学校に着任したの?」
声高く告げるその言葉に、
緊張感が増す。
「わかった……。
唯の方は私が考えるから、
とりあえず雪貴君は気にしないで
留学に専念するといいわ」
それ以上は聞き出すことも出来ず、
電話は切断される。
音弥の言葉が気になりながらも、
止まることがない時間は、
何時もの朝を迎える。
同じようにピアノ漬けの日々。
だけどピアノはデリケートな楽器で、
俺の不安をダイレクトに音色へと
表していく。
唯ちゃんを思えば思うほど、
不安になっていく俺の心。
レッスンに集中できなくなってきた俺自身。