「お疲れ様。
雪貴、明日は第三楽章を頭から
連弾するから、予習しておいて」
別れる間際に、鬼の一言。
「はいっ。
有難うございました。
部屋に戻ります、国臣さん」
無邪気に微笑みかける、
ピアノの貴公子に、
溜息をついて部屋へと戻った。
留学先で通学するようになった
神前悧羅学院の提携校。
学校の宿題にペンを進めながら、
携帯電話を見つめる。
電話を手に取って発信するものの、
唯ちゃんが電話にでる気配はない。
ただAnsyalのサウンドが
鳴り続けるだけで、
暫くすると留守番電話へと
変わってしまう。
ダメか……。
唯ちゃん、元気にしてる?
再び、メールを送信して
勉強に向き合いかけた時、
携帯が震える。
日本からの着信。
唯ちゃんからかもっと
期待を込めて
電話を受ける。



