怖くなんてない。



私には隆雪さんも
雪貴もいる。




アイツに怖がる理由なんて
何処にもないんだから。




握りこぶしを必死に作って、
自己暗示をかけるように
何度何度も心の中で呟き続ける。


覚悟を決めて、
ドアの方に視線を向ける。



「土岐先生、どうぞ」



そうやって招き入れると、
登場した男の先生に、
男子生徒のテンションは下がっていく。



「本浦先生の代わりに
 着任した土岐先生です。

 ミニスカート丈の
 可愛い女の先生を期待してた
 みんなはごめんなさいね」



発表直後に
盛り上がるブーイング。




そんなブーイングの中、
アイツは生徒たちに
自己紹介を始める。






「去年まで、
 村瀬公立高校で社会を
 教えてました。

 今年はフリーだったんですが、
 今回、名門の神前悧羅学院に縁を頂きました。

 土岐悠太です。
 
 出身校も、悧羅じゃないので
 ここのことは、全くわかんないけど
 それ以外のことと、社会だけは何時でも聞いてくれ。

 あっ、後唯ちゃんだっけ?

 お前らの担任のことも、
 何でも聞いていいぞ。

 俺、昔コイツと付き合ってたから」



突然の爆弾発言に、
クラスの視線が一気に集中。



私の思考とは停止寸前。





新学期初日から、
先が思いやられる幕開け。






招かざる人の突然の登場に
私の意識は怯えるばかりだった。