そんな毎日。



留学した雪貴は、
生活に慣れるのに忙しいのか
なかなか連絡が取れない。



お互いに、
一方的に送りあうだけのメール。


電話に出ることが出来ない
着信の形跡。





時差もあるんだ……。




通話料金が怖いながらも、
雪貴の声が恋しくて……、
携帯を握りしめては、
相手が出られない電話をかけ続ける。






「緋崎先生。
 今日の練習、終わりました」



音楽準備室で携帯を握りしめてる
私に声をかけてくるのは、
マーチングバンド部の生徒たち。



「はいっ、お疲れ様。
気を付けて帰ってねー。

 明日、秋からの公演用の新しいドリルが
完成してくると思うから、
 皆に伝えておいてください」

「わかりました。
 お疲れ様でした」




先生らしいこともしつつ、
携帯電話を鞄に片づけようとした直後、
Ansyalの音色が響く。


相手は百花。



発信相手を確認して、
携帯を着信させる。



「もしもし、どうしたの?」

「仕事だよね、唯香」

「うん。
 でも今、部活終わったから」

「あのさ……、どうしよう」

「どうしようって、何が?」



なかなか会話に繋がらない中身を
引きづり出すように、
百花と会話する私。