「ご飯、作らなきゃって思って
 材料買ってたけど、多分この家には
 似ても似つかないメニューかも」





まだピッカピカのカウンターキッチン。


そこに立つと、
スーパーの袋から取り出した材料を
ゆっくりと広げていった。





カルボナーラに、
唐揚げ。




おつまみには、
居酒屋風冷奴。



圧力鍋で一気に調理した
チャーシューを使った炊き込みご飯。



そしてコンソメスープ。




この部屋にはそぐわない
庶民料理をひとしきりと使ると、
テーブルへと並べた。




そんな私の料理でも、
託実さんも喜んでくれて
展覧会の準備に追われることになった
百花をサポートするべく
毎日のように託実家へと
晩御飯を作りに来ることになった。




雪貴も一緒に託実さんの家に
訪ねてきては二人で、
ギターとベースを抱えながら
演奏してる。





そんな世界が
私の日常的になった頃には、
雪貴と託実さんにくっついて、
百花と一緒に、
トパーズ棟の中にある
スタジオにまで
出入りするようになっていた。


気が付いたらも集まっていて
良く知ったAnsyalサウンドを
空間いっぱいに広げていく。





ずっと遠い存在だった
見てるだけだった、
存在が今はこんなにも近い。







百花の退院から、
私の時間もゆっくりと
動き出したように感じた。