「何?
 唯ちゃんの百面相面白いわー。

 俺も紀天も、隆雪も託実も
 ここの卒業生。

 知らんかった?
 まぁ、わからんか?

 悧羅は、天の川渡らんと
 男子校舎と女子校舎行き来出来んでしな」


そうやって呟いた十夜さんは、
悧羅校の生徒が昔からそう呼ぶ、
一本しかない渡り廊下を指差した。


知らなかった。




車はVIP専用駐車場へと
停車すると、憲さんが
ドアをゆっくりと開けてくれる。




先に出た雪貴が、
ゆっくりと手を差し出してくれて
私もその手に自分の手を重ねて
車から降りた。




周囲をキョロキョロ。
うん、誰も居ない。





「じゃ私、
 職員会議の時間が迫ってるんで」




慌てて立ち去っていく私の横を
一綺現理事長が、すれ違っていく。


慌てて理事長に会釈をして、
理事長の背中を見送ると、
理事長は十夜さんの方へと
近づいていくのが見えた。



えっ?
マジ、十夜さんって何者?