その道程が
どれだけ険しいことでも
それを乗り越えた時、
俺は兄貴が愛したファン一人一人と
向き合えると思ったから。



「託実さん。

 だったら託実さんの
 フレーズを
 全面尊重しますよ。
 
 その上で、
 俺も協力します。
 
 俺もAnsyalの
 メンバーですから」






将来のビジョンがリアルに
動き出した瞬間。




俺は何度も何度も、
託実さんと音を重ね合った。




「百花。

 早く、目覚めなって。
 
 ほらっ、アンタ
 こんなにも託実さんに
 愛されてんじゃない。

 何時までも寝ぼすけしてんじゃないよ。
 
 流石の私もこれ以上は
 待てないんだからね」



百花ちゃんの
ベッドサイドに再び戻った
唯ちゃんは、半泣き状態で
声を紡ぎはじめ、堪らなくなった俺は、
キリのいいところまで演奏を重ねた後、
唯ちゃんの肩をゆっくりと抱きしめた。









目覚めの
朝を待ってる。










刻み始めた秒針は、
ゆっくりと失ったものを
取り戻させていく。




俺が俺に立ち戻っていく
感覚を噛みしめながら。