「美味しい?」




そう尋ねられた問に、
素直に頷くしかなかった。



「良かった。

 今日も百花さんとこ
 行くんだよね。

 俺、今だからこそ思うんだ。
 
 ずっと通ってた兄貴の病室。
 
 俺、兄貴に辛い顔しか
 見せてなかったかもってさ。

 弱音ばっかで、
 兄貴もうんざりしてたかも」





そう言うと、
雪貴は視線を窓の外へとずらした。




「そんなことないよ。

 隆雪さん、ずっと雪貴のこと
 心配だったと思うよ」

「そうだな。

 俺、兄貴に比べてまだまだ
 頼りないしな。

 けど一緒だよ。

 唯ちゃんと百花さんもさ。

 だから百花さんが起きるの、
 笑って待っててやりなよ。

 どうしても泣きたくなったら
 唯ちゃんの傍には俺が居るから」




……雪貴……。






雪貴の優しい言葉に、
涙が止まらなくなる。




「ほらっ、一人で泣くなって
 言っただろ」



そう言って立ち上がった、
雪貴の腕の中、
すっぽりと包み込まれた私は
大声で泣いた……。