「託実さん、どうして」



俺の言葉に、
びっくりしたように唯ちゃんが、
託実さんに気が付く。


「唯ちゃん、
 久しぶりだね。
 
 少し参ってるかな。
 無理もないね、百花ちゃんは
 唯ちゃんの親友だったね」



そんな風に話を切り返しながら、
手早く唯ちゃんの状態を確認した
裕先生。
 
 

「今日は許容範囲かな。
 何時でも私を頼って来るんだよ」



裕先生が唯ちゃんと話している間に、
ICUの中から裕真先生は
託実さんを手招きで招き入れる。



その日、裕先生の好意で、
ガウンを着て
百花ちゃんの傍に居られるようになった
唯ちゃんは、固まったようにその場から
動かなくて。



ICUに広がる沈黙。




時間はゆっくりと過ぎて、
夜中の九時を回った頃、
俺は唯ちゃんを連れて、
ICUを後にした。



唯ちゃんは、
明日からまた仕事が始まる。



「託実さん、
 唯ちゃん連れて帰ります。
 
 また明日、顔出します」

「あぁ」


よろよろっとベッドサイドから
立ち上がろうとする託実さんを制して、
ICUを出るとガウンを脱ぎ捨てて
病院の外へと出ていく。