「それは?」

「あぁ、これ?
 コイツの大好物」



そう言いながら、
墓石にカクテルグラスを
供えると、二人静かに手を合わした。



「雪貴、今はゆっくりと
 心と向き合って答えを出せばいいよ。

 俺らはTakaの答えを待ってる」

「じゃ、そう言うことで。
 託実にも宜しゅうな。

 紀天、車頼むわ」




慌ただしく去っていった
十夜さんを見送って
憲さんは、
手早く墓石の前に広げた
カクテルアイテムを鞄に片づけ、
隆雪さんのお墓に手を合わせると
十夜さんの後を追いかけた。



思いがけない墓参りの人物に、
意表を突かれながらも、
気になるのは雪貴の表情ばかり。



チラチラと表情を盗み見る私に、
笑顔を返して、
ゆっくりと手を差し出す。


差し出された手をガッチリと掴み取って
雪貴にくっつきながら、
隆雪さんのお墓から少しずつ離れていく。




ゆっくりでいい。


時間がかかってもいいから、
雪貴が、前以上に笑いかけてくれて
その苦しみが解き放たれたらいいなって思う。



最寄駅まで向かう途中、
ウィンドウショッピングとか楽しみながら
ゆったりとした時間を過ごす。


そんな時間を打ち消すように、
鞄の中の携帯が、着うたを告げる。



えっ?




慌てて鞄の中から携帯電話を探す。


通知された電話番号。


その番号を確認しても
心当たりはなくて。