Love Songを君に【Ansyalシリーズ TAKA編】




いつもの朝のドタバタ。

時間配分を失敗して、
慌ただしく玄関から
荷物を抱えて飛び出していく
唯ちゃんを見送って、
キッチンで食事を進める。
 
 
唯ちゃんが学校に出勤した途端、
静まり返る部屋の音。



金属音と食器の音のみが、
部屋の中に共鳴していく。



オートミールを食べ終えて、
キッチンの洗い物を済ませると、
そのまま防音室へと入り、
分厚い扉をガチャリと閉じた。





白鍵と黒鍵がズラリと並ぶ
ピアノの前、ゆっくりと座って
一人奏でるメロディ。



兄貴が最後に作った曲。




唯ちゃんも
大好きな……天の調べ。





その曲を奏でる時間だけが、
今は兄貴と向き合えている気がして。








なぁ、兄貴……。

この先、どうしたらいい?



兄貴の分まで、
唯ちゃんのことは
幸せにするよ。


俺が守る。




けど兄貴を慕う
兄貴のファン心は
どうやって
守ってやればいんだよ。




クリスマスのあの日、
一日限りの予定で
兄貴のポジションを
引き受けたはずなのにな、
俺……弱いから、
気が付いたら、
兄貴を演じることで、
ずっと自分を保ってた。



俺が兄貴を演じることが
兄貴のファンも守ってやれてるんだって
勝手に都合のいい解釈して。