もぞもぞと気配を感じて
ゆっくりと目を開ける。


「おはよう。雪貴」


柔らかに降り注ぐ、
唯ちゃんの声。


「……唯ちゃん……」

「起こしちゃったね。
 まだ早いよ」


俺が眠るベッドサイドに近づいてきて、
キスを落とす、唯ちゃんの腕を
ギュっと掴み取って抱き寄せる。

唯ちゃんの体温、唯ちゃんの鼓動が
俺の中に流れ込んでくる。


「……もうっ……。

 ほらっ、雪貴、遅刻しちゃう。
 今から朝食作ってくるから。

 今日はオートミールね。
 
 お昼ご飯は、リゾットを作っておくから
 レンジで温めて食べてね」


部屋を出る唯ちゃんを追いかけるように、
リビングのソファーに座り込むと、
唯ちゃんが刻む、包丁の軽快なリズムが
聴覚を刺激する。


気が付くと無意識のうちに、
指先がギターの弦を弾き
ピアノを爪弾く。

全てはエア-のみの仕草。

それでも俺の中には、
リアルな音色が溢れだす。



そんな俺を、
対面キッチンから覗きながら
にっこりと微笑む唯ちゃん。