「唯ちゃん。
 こっち」



私の手を取って、
ゆっくりと
歩いていくエントランス。


エントランスの前に立つと、
ドアマンがゆっくりとお辞儀をして
ガラス戸の鍵を解除して開く。



「お帰りなさいませ。
 宮向井様」


何?


宮向井様?




どうして、
雪貴はこんなにも
平然としていられるの?




そのまま受付に行くと、
私が出入りできやすいように
入居手続きをしてくれる。



「今日から
 またお世話になります」



彼はそう言うと、
エレベーターにのって
上の方の階まで
移動する。




エントランスには、
ステンドグラスから
光が降り注ぐ。



驚くばかりに洗練された、
モダンなデザインの建物に
慌ただしく視線を移しながら
雪貴の後ろをついて行った。




ゆっくりと歩いていくと、
とあるドアの前で足を止める。



ポケットから鍵を取り出して、
ロックを解除すると、
雪貴は、ドアを開けて
私を部屋の中へと通した。