俺の前で、
あぁやって笑顔を見せてくれることも
なかったかも知れない。




そして兄貴を思う
ファンの後追い自殺。





兄貴が亡くなった後、
熱烈な兄貴信者たちが、
次々とTakaのいない世界に絶望して
その体を宙へと舞い踊らせた。






その度に何も出来ない俺を
思い知らされた。


兄貴のことを思ってくれる
ファンさえ……
兄貴がずっと大切にしてきた
宝物さえ守れない非力さに苛立った。




そんな葛藤で過ごす中、
気が付いたら失くなってたんだ。







大切な音色が。





すきま風は、
今も心に影を深めていく。




そんな声から逃げ出すように、
俺は兄貴からも逃げ出した。







「雪貴。

 ホント、大丈夫?
 ほらっ、サロンついたよ。

 真っ青だよ……顔色……」




何時の間にか、
辿りついたサロン。



グランドピアノの椅子に
腰かけるように、
介助してくれる唯ちゃん。