夜、何時もより少し遅い時間に
唯ちゃんが顔を覗かせる。


「お帰り」

「ただいま、雪貴。

 もう職員会議大変だよ。

 もう卒業式の
 最終打ち合わせだもん」

「唯ちゃんもやっぱ、
 先生なんだよな」



そう。

手を伸ばせて、
触れられる場所に
絶えず存在する唯ちゃん。


そんな唯ちゃんも、
こういう会話の瞬間は、
教師なんだって再認識させられる。




教師と生徒の恋愛。



世間には
公に出来ない恋。





「雪貴、今日の晩御飯は食べた?」




開口一番、唯ちゃんが気にするのは
俺が食を放棄してないかどうか。



「全部は食べれないよ。
 でも……少しだけ」

「そっか。

 でも少しでも食べれるようになったね。
 霧生くんが心配してたよ」

「あぁ、霧生なら
 今日も顔出して帰ってったよ。
 
 授業の写し置いてった」

「そうなんだ」




唯ちゃんの口から、
霧生の名前が紡がれるたびに
チクリと広がる痛み。



「唯ちゃん……」



ベッドの上、名前を紡いで
無防備な唯ちゃんを抱き寄せる。