「唯ちゃん」
ふと、名前を呼ばれて
声の方に振り向きざま、
頬をムギューっと抓られる。
「力みすぎっ。
唯ちゃんが倒れたら、
一番心配するのはアイツ。
忘れんなよ。
たまには、アイツを放って
唯ちゃん自身を休ませるのも愛情な。
まっ、唯ちゃんが行けない時くらい
俺が雪貴見ててやるから」
早々と言い切ると、
校舎の中へと消えていく長身。
チャイムが鳴り響いて、
真っ青になりながら、
職員室へと駆け出して滑り込んだ。
セーフ。
呼吸を乱しながら、
何とか滑り込んだ朝の職員会議時間。
学年主任や教頭に少し睨まれる視線を感じながら、
肩身狭く、伝達事項のメモを取っていく。
今は少しでもいい。
私が出来る小さなことを
雪貴の為にしてあげたい。