霧生音弥
(きりゅう おとや)。



雪貴の親友で幼馴染。


そして雪貴不在の今、
学級委員長代行。




眼鏡に指先を少し添えて、
フレームを持ち上げると、
私の方を覗き込む。



「おはよう。霧生くん」

「って言うか、唯ちゃん。
 目の下、クマ出来てる」



霧生くんに言われて、
慌ててコンパクトを鞄から取り出す。


「ホントだ。

 コンシーラーで
 カバーしてきたつもりなのに」


小さく呟いた私に、
霧生君は小さく耳元で
囁くように接近してくる。


「何?

 今日も雪貴のとこ?」


囁かれるままに、
素直に頷いた。




入院している雪貴の病室に
入り浸って時に、
鉢合わせして以来、
私の雪貴の関係を知ってしまった
霧生くんは、
それ以来何かと気を使ってくれる。


気を使ってくれるって言ったら
物は言いようなのかな。

悪く言えば、私が霧生くんに
遊ばれてるだけとも言うんだけど
秘密を受け入れて協力してくれるのは
やっぱり頼もしい。





「アイツ、どんな感じ?」

「まだ時間かかるよ。

 長期戦覚悟してるもん」



ちゃんと私が守るんだから。

雪貴の心も癒すんだから。