「おはようございます」



校門に一歩踏み入れた途端に、
クラスの子たちをはじめ、
生徒たちが次々と声をかける。



「おはよう」



にこやかに教師スマイルを
返しながら、
職員室へと向かう足取りは重い。



進級の話題もチラチラと出始める季節。


二月の期末試験も受けられず、
三学期になっても、
一度も出席が出来ていない
雪貴は、やっぱり先生方の中でも、
進級を危惧する対象でもあって。


いくら成績が優秀な
学級委員をしていた存在でも、
学校での生活態度は、
褒められたものじゃない。


早退を繰り返した二学期まで。


今となっては、
Ansyalの活動のための
早退だってことは良くわかるんだけど、
それもまた、公になった今では
問題行動の対象でもあって……。


優等生なんだか、
そうじゃないんだか担任としては、
頭が痛い限り。



……雪貴の進級は私が守らなくちゃ……。



なんて、力む部分もあるんだけど
素直すぎる雪貴に、
これ以上、精神的な負担はかけたくない。



いろんなものを抱え込み過ぎて、
破裂してしまった雪貴の心の傷を思うと
やっぱり少しでも穏やかに過ごせるように
包み込んであげたくなる。

雪貴の傷を少しでも癒したくて。


よく言えば恩返し。

だけど本当は、怖いだけ。



私は強くないから……。


隆雪さんが居なくなって、
雪貴まで失うのが怖い。







「よっ、唯ちゃん」




私の肩を背後からポンっと叩いて
顔を覗かせる少年。