人身事故だったら、
まだまだ時間がかかる。
だったら、
走ってく方が近いかも。
「すいません。
急いでるんで、
ここでおろしてください。
私、時間ないんです」
雪貴に逢いたい。
少しでも早く会って
彼を抱きしめたい。
私の中にこんなにも
情熱的な感情があったなんて
自分でも戸惑うくらい。
タクシーのドアは、
ゆっくりと開く。
「お釣り、いらないです。
すいません」
運転手さんに、
福沢さんを1枚手渡して
慌てて、私は走り出す。
途中、ハイヒールを脱いで、
手に持つとストッキングのまま
冬の街中を走り続ける。
どんよりとした低い空からは、
雪が舞い始める。



