点滴の液体が
全て体内に吸い込まれたのを確認して、
俺もナースコールを通して、
悠久先生を呼び寄せて
退院許可を貰うと昨日よりも、
幾分か軽くなった体を起こして、
兄貴との最期の場所へと向かう。




会場内は、
すでに慌ただしい空気に包まれていた。



昨日の託実さんの発表を受けて、
もう一人のTakaであることがばれた
俺にもマスコミは入り込んでくる。




「Taka君の弟は、
 貴方のことですか?」

「最愛のお兄さんが
 亡くなられましたが
 今のお気持ちはいかかですか?」


容赦ないマスコミの質問攻めに
戸惑う俺に、
託実さんが後ろから駆け寄ってきて、
俺をガードするように入口の方へと向かう。

ガードマンが入れ替わりに、
何人も出てきて、
マスコミの人たちや集まってきたファンを抑え込む。



「Taka~」


Takaの名を次々と呼ぶ声。




その声は兄貴を求める
声だとばかり思っていたのに



「Taka~。

 お兄さんTakaさんのことは
 わかんないけど、私は、
 弟Takaさんの時に出逢ってファンなったの。
 
 どっちのTakaさんも大好きだから。
 絶対に無理しないで」



時折、わきあがる声は
俺を罪悪感から
解き放ってくれるものだった。