Love Songを君に【Ansyalシリーズ TAKA編】





霊安室。



兄貴に縋る様にくっついて、
離れない唯ちゃん。





全てを取り戻した
唯ちゃんは
俺のところには戻らない。




そう知りながらも
この状態を作った俺自身。 
 




兄貴と二人きりで過ごしつづける
その部屋に、俺の居場所はない。




黙って扉を閉める。





身を寄せる場所は屋上。





ようやく辿り着いた、
屋上で冷たい冬の風を感じながら
ただ呆然と
立ち尽くしつづける俺自身。






どれだけの時間が過ぎようとしているの、
すでに時間的感覚は
俺の中に存在しない。





ふいに何かが
俺の首筋に触れてきた。





慌てて視線を映して捕える。





「見つけた……」




その人は少し前まで
兄貴の主治医だった人。
 


「やっぱり」



その人は、
呆れたような表情を浮かべて
すぐに俺に向き直る。



「雪貴君、休めないね。
 
 体も心も、
 こんなにも
 悲鳴あげ続けてるのに。

 僕には一時的に、
 この体を動くようにしか出来ないけど、
 お通夜とお葬式の前に
 少しだけ休まないとね。

 隆雪君を見送るのに、
 倒れるわけにはいかないよね」



そんな柔らかな言葉に
俺はその場で、
崩れ落ちた。



俺自身が限界なのは、
もう十分わかりきってる。