「悠久先生」
兄貴の傍。
床に座り込んで、
兄貴の手を握りしめたまま
主治医の名前を
呟いてじっと見つめる。
医師は、ただ黙って
首を横に振った。
「唯ちゃん。
ここ来て。
兄貴に逢ってやってよ」
病室の外で
立ち尽くしている
唯ちゃんに俺は手を伸ばして
迎え入れる。
私、ここに居ていいの?
そんな風な戸惑いを
隠せないままに
ゆっくりと病室に
入ってくる唯ちゃん。
メンバーの視線も、
悠久先生の視線も
唯ちゃんに伝わる。
ここに居る人は
皆、唯ちゃんの中から
兄貴の記憶が
なくなっていることを知っている。
当然。
俺が
ここで何をしようとしているのかも。



