今、俺一人で
兄貴のところに向かえば
唯ちゃんは
苦しむことがないかも知れない。


だけど最期に、
兄貴に逢わせてやりたい。



そう思うのも俺の心。



全てが終わって、
もう触れることすら
叶わなくなった兄貴。



そんな兄貴に対して、
兄貴のいない世界で、
唯ちゃんが兄貴の記憶を
取り戻したら、
そう思ったとき
唯ちゃんを
連れていくことしか
考えられなかった。



俺が唯ちゃんから
笑顔を再び奪うかも知れない。



唯ちゃんは、
俺を恨むかもしれない。


もう二度と、
俺の隣で無邪気に笑うなんて
してくれないかも知れない。


だけど、この機会を逃したら
もう唯ちゃんが、
忘れ去った空白の時間に
彼女は向き合えない。