彼らしいメロディーラインで
紡がれる、
ピアノの音色だけで語られる
恋物語。




自分のピアノを蓋をあけて、
彼の音色に重ねるように
自らの鍵盤に指先を走らせる。






お風呂から
出てきた彼は、
何も言わずに濡れた髪を
タオルで乾かしながら
私が座るピアノの椅子に
半分、腰かける。



そして自らの手で、
PCのスピーカーから流れ出てる
曲を目の前で、重ねていく。





スピーカー越しよりも、
更に切なく、悲しく愛おしく
物語を紡いで行く指先に、
私は、この曲を作ったのは
雪貴なのだと実感した。



暫く、彼だけのLove Songに
酔いしれる私。



彼は、ゆっくりと、
物語を紡ぎ続けながら
彼は私の瞳を捕えて、
アイコンタクト。




その合図を受けて、
さっき重ねていったように、
彼の曲に私の物語を
即興で重ねていく。



二人で紡がれる
Love Songは
二人きりの室内に、
甘く広がっていく。




一曲演奏し終わった後、
私たちは心も体も
一つに繋がった。








最高の幸せの時間。










そんな幸せの絶頂を
私は深く実感していた。







彼が居てくれたら
彼が私の隣で
微笑んでくれていたら
凄く嬉しい。







二人で、これからも、
あぁやってピアノを通して
物語を紡ぎ続けることが出来れば
どんなに幸せだろうか……。










私の隣で、
穏やかに眠り続ける彼を
起こさないようにしながら、
昨夜の余韻を
今も感じる体を抱きしめて
シャワーを浴びて、
PCの前に座り込む。










PCの画面。



曲が終わった後に、
ただ文字だけで紡がれ続けている
メッセージに気が付く。




ボリュームを鳴らないように
絞って、一部の再生を巻き戻しにする。




真っ暗な画面。




画面の下から上へと、
文字だけが流れていく。