「もしもし、百花?」

「おぉ。

 唯香、元気そうじゃん。

 って言うか、あのさー。
 アンタの年下の彼氏はどうなの?」

「宮向井くん?」


思わず、
彼の苗字を紡ぐ。



名前を呼び捨てにするのは
何故か、まだ照れくさくて。



「って言うか、
 まだ苗字で呼んでるの?
 
 何してんのよ。
 ホント」


電話の向こうの
百花は実に言いたい放題で
その声に百面相させていく。


「それで。
 今日は、何?」

「何って、用事がないと
 電話しちゃいけないってこと?

 ホント、唯香。

 年下の彼氏が
 出来てから人付き合い悪くなったよねー」


人付き合い、悪くなった?


何気ない、百花の一言が
チクリと突き刺さる。


「って、嘘嘘。
 今日もいるんでしょ。

 お邪魔虫は、早々に電話を切るわよ。
 
 あっ、そうそう。

 なんかねー、
 最近凄くネットで話題になってる曲あるんだ。 

 何も言わずに聴いてみてよ。
 後でメール送るから」

「うん」



そう言って、
百花が電話を静かに切る。