その合間に、
兄貴の病院にも
顔を出すのは忘れない。
ふらつく体を支えながら、
兄貴のベッドサイドの椅子に
力尽きたように
座り込んで短い睡眠を貪り
目が覚めたら、
そのまま地下作業中のスタジオへと戻る。
地下作業を続けて、
気が付けば朝になる日々。
そんな生活を続けながら
迎えたコンクール本選。
決して絶好調と言える
状態ではないのは、朝から知っていた。
それでも、欠場と言う
選択肢は俺にはない。
これは兄貴ではなく、
雪貴として俺にとって
大切な行事であることには
違いないから……。
後は……今日こそは、
唯ちゃんが
来てくれるかも知れない。
この日、来てくれたら
唯ちゃんは、
兄貴ではなくて
紛れもなく、
俺自身を見に来てくれる。
そんな気がして。
地下スタジオのピアノで、
最後の練習をしてから、
シャワーを浴びて
衣装を持って、タクシーに乗り込むと
会場へと向かった。



