「君?」 病室を出て壁伝いに 再び廊下を歩いていると 誰かに呼ばれた気がした。 一瞬、 立ち止まりそうになる足に 叱咤して前に出し続ける。 今、立ち止まったら もう動けなくなる。 だから…… 誰にも捕まりたくない。 あの場所に戻るのも嫌。 ここに 留まりつづけるのも嫌。 望むのは解放……。 動きづらい体を 必死に動かして ひたすら逃げる。 もう誰にも 邪魔されたくない。 私は終わらせたいだけ。