Love Songを君に【Ansyalシリーズ TAKA編】





「Taka、何してる?」




打ち合わせをしていた
託実さんが慌てて、
物音のした方へと走ってくる。





捕まれる腕。




その腕からは
赤い筋がポタリポタリと、
血が床を滲ませていく。






「十夜、救急セット」





思考がすでに
覚束ない俺に接しながら
託実さんの声が
響くのが何となくわかる。




自分がここにいるのに、
此処にいない。



そんな強い
離人感覚の恐怖が
俺を飲み込み続ける中
意識が遠のいていった。




次に気がついた時、
俺は楽屋のソファーに
寝かされていた。




楽屋に
すでにメンバーの姿はない。




ステージから毀れてくる
Ansyalのサウンドが
楽屋にまで届いてくる。




重い体をゆっくりと起こして
ソファーに一度腰かけると、
机の上に置かれた
水分を軽く補給して喉を潤す。


その隣には
鎮痛薬の飲み終わった殻が
体温計と共に
無造作に置かれていた。