唯ちゃんみたいに
兄貴を支えに
Ansyalを追い続け
生きる糧にしている
そんな兄貴のファンを
苦しめ続けるんだろう。




あの病室で見送って以来、
唯ちゃんとは一度も会えていない。


夏休みも残り一週間。
現在、地方LIVE遠征中。


ツアー途中の俺は、
唯ちゃんのことが気になりつつも
どうすることも出来ないまま
兄貴の影として、
Takaを続けてた。



楽屋内。

Takaの衣装に身を包んで、
全ての準備を終えても
ギター、一つ抱れずに
ただ鏡台の前で座り続ける俺。




鏡に映る俺は
兄貴じゃない。




Takaじゃない。



Takaになりきれるまで
兄貴のギターは持てない。





鏡を見つめながら
鏡の向こうに映る
俺自身を思わず殴りかける。



寸でで、止めるはずが
勢い余ったそれは、
止めることすら出来ず鏡は、
パリーンっと音を立てて割れた。


衝撃を与えたところから、
まるで蜘蛛の巣のように
ヒビが静かに広がり
俺はその中で捕らわれて
もがき続けてる。