忘れてた。


写真……
撮らないといけないんだった。




「唯香」



唯ちゃんの名前を
ドキドキしながら呼び捨てにする。



「えっ?」


涙を拭いながら、
俺の方を振り向いた
唯ちゃんの唇に
たまらなくなって、
俺自身の唇を重ねた。


唯ちゃんの柔らかい、
唇の感触が
俺の元に伝わってくる。



愛しく口づけを降らせて、
ゆっくりと解放する。



離れた二人の隙間を、
風が吹き抜けていく。



「悪い……」


放心状態の唯ちゃんに
俺はTakaの時間だということを忘れて
とっさに謝る。



唯ちゃんは指先で、
自らの唇をゆっくりと辿ってた。


その後、三枚だけ写真を撮影して、
俺たちはまた言葉を交わすことなく
寄り添いながら
下界を見下ろす。


天使が地上を見守る様に。


地上の光が、
やわらかに滲みながら
光の線を幾重にも育んでいく。