……痛ぇよ……。











こんなに
近くにいるのに……。



手を伸ばせば
触れられるのに
唯ちゃんは、
俺には遠すぎて。






静かに病室を後にして
学校に、唯ちゃんが倒れて
付属病院に
入院したことだけを伝えて
俺はそのまま実家へと帰る。






誰もいない実家。



時が
止まったままの家。





黴臭い湿気を含んだ
匂いが家中を包み込む。





あの日から
立ち入ることのなかった
禁域。





二階の兄貴の部屋の扉を
ゆっくりと開ける。







カーテンを開いて
光が差し込んだ先に
映しだすのは写真の中で
微笑む唯ちゃん。









プライベートで
ファンの写真なんて
飾ったことがなかった兄貴が
唯ちゃんの写真だけは飾ってた。