「悪いな、雪貴。
 送ってくよ、いったんマンション戻るだろ」



そう言って託実さんは、俺を病室から出るように促すと、
先を歩く俺を追いかけるようにして、駐車場へと誘導した。


託実さんの愛車に乗り込んで、マンションまで送られた後は
そのまま学院まで送り届けて貰う。


愛車に乗り込んで、雪貴をマンションに送り届け
ついでに学院まで送った後は、事務所の地下スタジオへと向かう。



そのまま学生生活を過ごした午後。


セトリメールだけ受信されてきた。

すぐにメールを確認して、
俺自身も演奏のイメージトレーニングを行いながら、
集中しきれない俺もいる。


Takaになりきれない俺。

AnsyalのTakaは、
兄貴のコピーじゃないといけないのに、
俺は……俺自身でありたいと何処で臨んでる。


手に入れたばかりの唯ちゃんのメールアドレス。


AnsyalのシークレットLIVE情報を
唯ちゃんにメールしてやるか否か。



何かのきっかけで、
Ansyalを利用するのは楽かもしれない。


だが……それは、
Taka=宮向井雪貴になってしまう。


唯ちゃんにとっての
Takaは……。



脳裏に浮かんだ、今もベッドで眠り続ける
その顔に、パタリと携帯を閉じた。