「雪貴、起きろよ。
 今日も学校だろ、もうすぐ6時だ」


体を揺すりながら、
俺を呼ぶ声が聴こえて、
重怠い体をゆっくりと兄貴のベッドから起こす。

視界に映るのは……託実さん……。


慌てて「託実さん……」っと名を声にした。


「昨日連絡できれば良かったんだが、
 今日の夜、霞ヶ丘でシークレットが決まった」

「霞ヶ丘……兄貴たちがインディーズの頃から世話になってますよね。
 今日は5月18日。

 あぁ、ライヴハウスが出来た記念日なんですよね。
 いいですよ。

 試験前だから、夕方17時までには解放されると思うんで。
 俺、現地集合でいいですか?

 今日のセトリだけメールください」



あっ……空白の時間になってたスケジュールだけど、
いきなりAnsyalのシークレット。


託実さんの用事は、俺にとって心をざわつかせる。


そんな心を隠しながら、
ベッドに眠る兄貴の顔を覗き見て、何でもないように答える。