「ドア動かしておけば良かったな、ごめん」
「ううん、大丈夫。それよりパン、美味しかったよ。ありがとう。」
「本当!?あっ、今終わるからそこで待っててね」
「うん」
お店の中の最終チェックをし、よしと一言呟いて電気を消し鍵をかけた。
「寒いなぁ、やっぱり18時にもなると」
外に出た途端、冷たい風が頬に当たる。
「そうだね、昼間は結構暖かかったのに」
「まぁ、まだ雪が解けてないからなぁ」
もうすっかり空は青黒い中、街灯を頼りに歩く。
お店から数メートル先のところに階段がある。
そこを降りると二つの分かれ道。
二人はいつもそこでさよならをしなければならない。
「じゃあ…」
もうお別れかと思い寂しい気持ちを隠して別れを切り出した時、
「あっ、ちょっと悠くん?」
「…ん?」
いつもじゃあねって言う美桜が突然僕の名前を呼ぶから
少し疑問を抱き美桜の方を見た。
「あのっ、嫌ならいいんだけど、昨日カレー作ったの。凄く余ってるから…食べていかない?」
「えっ、いいの?」
美桜からの急なお誘い。
びっくりしたけど僕の口はえっいいのって。
にやけてないかな今、僕。
「うん、悠くんがいいのなら」
「じゃあ…いただきます!」
迷いなく僕は体を美桜の道の方へ勢いよく向けたら
美桜が大きな声で笑ったから
「何で笑うんだよー」
って小さく抵抗した。