「本当に嫌ですよね。あいつ。」
「えっ」
厨房に戻ると、パン生地を練るのを止めてこちらを見た子はアルバイトとして雇っている梨紗ちゃん。
「この前私に彼氏いるの?って聞いてきたんですよ!?前にいないって言ったのに!」
「あー…それは確かに嫌だな」
「…忠野さんはいいですよね。優しい彼女がいて」
梨紗ちゃんは若干下を向きながらそう言った。
梨紗ちゃんはそう、まだ高校生。
だから恋には尚更敏感何だろうな。
「でもあいつ、今彼女と上手くいってないらしいよ」
「えぇっ!そうなんですか!?」
予想以上にびっくりする梨紗ちゃんを思わずからかってみようと思い
「おっ、何その反応」
と返した。
「あっ、いや、別の意味でですよ!?ざまあみろってことです!!」
「先輩〜。あっ、梨紗何怒ってんの?」
とそこにいままでの経緯を知らない男が登場。
「はぁ!?怒ってないし!!ていうかいちいちこっち来ないでよ!!」
「はーい…」
梨紗ちゃんに負け、男退場。
「素直になれないな」
「…うるさい」
軽く声を掛けると梨紗ちゃんは小さな声で抵抗した。