「うぇ~ん…もぉ嫌だぁ…」
走り出してから数分。
あたしの心は見事に折れた。
チャイムが鳴るまであと12分。
ここから学校まで15分もかかる。
これはもう完璧な遅刻だと諦め、フラフラ歩きながら制服の裾で涙を拭う。
5月の陽だまりがあたしを包み込んで、夏の匂いを運んでくる。
そんな時、後ろからププーッと激しいクラクションの音がして
クリーム色の軽自動車があたしを追い越して、数メートル先で止まった。
この車―――…
「ユズ姉!」
「悠里、あんた遅刻じゃないの?御波高の生徒誰もいないよ?」
運転席の窓を開けて、ユズ姉が顔を出した。

