「ちょっとちょーだい」
「いいよ」
翔琉の声に、りんご飴を渡そうとした。
でもその前に翔琉は、あたしが手に持つりんご飴に噛り付いた。
すぐ近くにある翔琉の顔。
あたしは息をするのも忘れてしまった。
「うん。甘い」
翔琉の一言で、止まった息はゆっくりと吐き出された。
あたしの心臓はうるさかった。
ーーーまるでデートじゃん。
でも翔琉は緊張してる素振りなんて、一瞬も見せない。
あたしばっかり緊張して、ばかみたい。
あたしはりんご飴に噛り付いた。
人の流れに流されるまま、4人で歩く。
でもそのうち、屋台はなくなり人も少なくなった。
ーーーもう、お祭りは終わりか。
公園の出口は、すぐそこだった。
空はだんだん暗くなりはじめている。
もうすぐ出勤の時間だ。
ーーーこれから、どうするの…?
不安気に翔琉を見上げたけど、長い髪に隠れた横顔は見えなかった。

