甘い蜜



「楽しかったな、お化け屋敷」


智哉の声に、凛は笑顔で頷く。

でもあたしは頷かなかった。


ーーー楽しいはずがない。

嬉しかったことはあったけど。


「俺も」


翔琉の声に、あたしは顔を見上げた。


すると翔琉は、

「いろいろ楽しかった」

そう言って、あたしの顔を見た。


ーーーあたしの反応が楽しかったって訳ね。

翔琉まで、あたしを馬鹿にするなんて。

あたしは、拗ねたふりをした。


でも、内心は嬉しかった。

だってまだ手は繋がったまま。


「なんか食いに行こう?」

翔琉の問いに、

「…りんご飴食べたい」

と小さく呟くと、繋いだ翔琉の手があたしを連れて行く。


「あたしもりんご飴食べたーい」

「じゃ、行くか」


後ろで凛と智哉の声が聞こえた。


でもあたしは振り返ることなく、翔琉についていった。


繋がれた翔琉の手は、暖かくて、嬉しかった。


屋台でりんご飴と、翔琉はフランクフルトを買った。


後ろには、凛と智哉。

隣には、翔琉。

もうあたしは、はぐれる事はなかった。


安心してりんご飴を食べ歩きした。