甘い蜜




何度悲鳴を上げたか、わからない。

何度また翔琉の腕にしがみついてしまったのかも、わからない。


それでも、繋いだ手は離さなかった。


「あ、出口」


翔琉の声に顔を上げると、出口はすぐそこだった。


やっと見えた出口の光に、胸を撫で下ろす。

ーーーやっと出れる。


「翔琉、ありがと」

見上げると、翔琉の笑顔があった。


「おつかれさん」

出口の光を受けて、翔琉の顔は眩しかった。



外に出ると、凛と智哉が笑顔で待っていた。


ほのかに赤く染まった凛の頬。

その原因はすぐにわかった。


凛も、智哉と手を繋いでいたから。


ーーーよかったね、凛。

あたしは凛に笑いかけた。


そして、あたしもまだ翔琉と手を繋いだままだったことに気づく。



ーーーまだ、離したくない。



さっきは迷子になったから、繋いでくれた。

お化け屋敷では、はぐれないように繋いでくれた。


翔琉は理由があって繋いでただけ。


でも、あたしはまだ離したくない。

そう思ってしまった。