甘い蜜




ーーー嘘。やっぱり大丈夫なわけない。


凛に無理矢理引っ張られ、あたしの目の前にはお化け屋敷。

真っ暗で見えない、入口のその先。


「お化け屋敷で迷子にならないでね」

凛は笑って茶化すけど、あたしは笑えない。


「やっぱり、入りたくな…」

「だーめ」

最後まで言い切らないうちに、凛が制した。


「4人分の入場料、払ってきたよ」

智哉の声に、

「じゃ、入ろう」

と、あたしの背中を押す凛。


目の前には、先が見えない真っ暗な暗闇。


ーーー怖い。


あたしは入る直前に手で顔を覆った。


そんなあたしを見て、隣で笑う翔琉。

でもあたしは、笑う翔琉を見る余裕なんてなかった。



中に入ると真っ暗で、不気味な音が響き渡る。


ーーー早く、早く出口探さなきゃ。


顔を覆った手を外すと、暗闇の中に浮かび上がる不気味な光。

なかなか前に進まない、あたしの両足。


隣に翔琉がいることを確認して、こっそり深呼吸をした。


でも次の瞬間、あたしの背中を押していた凛の手が離れた。


そして、


「きゃああ!」


凛の悲鳴。


その悲鳴に驚いて、あたしも悲鳴をあげた。