甘い蜜



「俺からしたら、みんなチビだけど」

翔琉はそう言って、あたしにクレープを手渡した。

出来たてのクレープは、ほんのり暖かかった。


「ありがと」


翔琉にお礼を言って、早速一口食べた。

久しぶりに食べるクレープは、甘くておいしい。


「俺、お好み焼き食いたい」

「あ、俺も食いたい」


智哉の一言に、賛成する翔琉。


早速お好み焼き屋に向かうことになり、

「行くよ?」

クレープに夢中のあたしに、翔琉が声をかけた。

あたしは頷いて、翔琉の隣に並んだ。


凛と智哉を先頭に、あたしと翔琉は後をついていく。


でもあたしは、クレープを食べる事に夢中になっていた。



気づくと、あたしは1人だった。


ーーーあれ、翔琉は?


周りを見渡しても、人が多すぎて姿が見えない。


人の流れに流されてどこに向かってるのかも、わからない。


ーーー翔琉、どこ?


人ごみを抜け出して、芝生に出た。

行き交うたくさんの人を見渡す。


でも人ごみの中に、翔琉の姿は見つからなかった。


クレープを片手に、あたしは迷子。

迷子センターには行きたくない。

でも翔琉は見つからない。


ーーー翔琉、どこにいるの…?


困り果てて、視界はぼやける。

下をむくと、涙が零れ落ちてしまいそう。