甘い蜜




「翔琉、こっちこっち」


たくさん並んでる屋台の中の一つに、手を振る智哉の姿を見つけた。


「あ、クレープだ」

智哉の隣には、クレープを食べる凛の姿も見えた。


ーーーあたしも食べたい。


「どれ食いたい?」

財布を片手に、翔琉があたしに聞いた。


ーーーえ、買ってくれるの?


あたしは嬉しくて、

「チョコと苺のやつ」

きっと顔にも、嬉しさが滲み出ていたかもしれない。


人をかき分けてクレープ屋に着くと、翔琉はクレープを注文してくれた。


「みーちゃん背小さくて見えなかった」

「翔琉はデカいから、すぐ見つけたけど」


クレープが出来るまでの間、凛と智哉に背の小ささを馬鹿にされた。


ーーー言われなくても、わかってるよ。


でも、

「凛には言われたくない」

凛だって、背は小さい方だ。


「あたし、みーちゃんより大きいもん」

高いヒールを履いて威張る凛。


ーーーずるい。あたしより高いヒール。


「小学生レベルの喧嘩だな」

そう言って笑う智哉に、あたしも凛もつい笑ってしまう。