甘い蜜




結局あたしはどうするか決まらないまま、タクシーは目的地に着いた。


大きな公園はお祭りで賑わっている。

さすが、毎年行われる大イベントだ。


公園の前には、翔琉と智哉の姿があった。


「おまたせ」

二人に駆け寄る凛に、あたしは一歩遅れてついていった。


翔琉に近づくほど、緊張は増していく。

ーーー直視、できない。


凛が智哉と並んで公園に入っていく姿を見て、あたしは、

「遅くなってごめんね」

翔琉の隣に立った。


「いいよ。俺らも今着いたとこだから」


その声に、翔琉を見上げると目が合った。


ーーーいつもと変わらない、翔琉の顔。

緊張してるのは、あたしだけ。

急に恥ずかしくなって、下をむいた。


「祭り、行こ?」

「うん」

あたしは頷いて、翔琉と公園に入った。


入ってすぐ、人の多さに驚いた。

はぐれてしまったら、背の小さいあたしは見つけてもらえなそうだ。


ーーー迷子センターには、絶対お世話になりたくない。


はぐれないように、ちょっとだけ翔琉との距離を縮めて歩いた。