甘い蜜





ちょうどそこに、店員が空いたお皿を下げにやって来た。


翔琉の空いたグラスも下げてもらおうと、あたしは手を伸ばす。



でもその時、翔琉もグラスを持とうとして



ーーー手が触れた。



「あ、ごめん」


「…わりぃ」



さっき繋いだ手が、ちょっと触れただけ。


なのに、それだけの事なのに…。



ーーードキっとしてしまった。



翔琉は自分のグラスを店員に渡す。

その動作は自然に見えた。



緊張してるのは自分だけ。



急に恥ずかしくなって、あたしもカクテルを一気に飲み干した。



ーーー翔琉の前だと、やっぱりあたしは調子が狂うみたい。



「ビール一つと…何飲む?」


店員に注文する翔琉に、あたしも慌てて酒を頼んだ。


「あたし、同じので」


本当は飲みたいものが別にあった。

でももう、酒なら何でもよかった。


ーーー緊張して喉が乾く。


何でこんなに緊張しているんだろう。


恥ずかしくて、あたしは翔琉の顔を見れなかった。